「ユリア師団長の家って、何時に来ても明かりがついてますよね。」
「暗所恐怖症だから、明かりのないところが耐えられないのだろう。」
「そういえば今ふと思ったんですけど、
ボイス元帥ってユリア師団長の祖父にあたるわけですよね?
一緒に住んではいないんですか?」
「何年か前に別々に暮らし始めたはずだったな。
ボイス元帥の家、つまり実家は住宅街にあるんだが、
夜はお世辞にも明るいとは言えない区画だったからな。」
「それで、引っ越したんですか?」
「らしい。かつてユリア自身がそう言っていた。」
「……でもこの明かりって、
言い方変えれば
いい近所迷惑ですよね。」
「だがあそこまで無尽蔵にライトの魔導を使えるからこそ
なせることが出来た明るさではあるがな。
やはり大魔導師だった祖母の血を濃く引いたのだろう。」
「祖母?」
「イーディス=ハーシェル。旧姓ベークラント。
魔導を詠唱無しで発動できた稀代の師団長。
その名前を聞いたことはないか?」
「あるような、ないような……。」
「なければどこかに入荷されている『鐘の音を合図に』を読む事だな。」
「……は?」
「いや、なんでもない。宣伝だ。」
「宣伝って、なんですか?」
「……宣伝?そんなこと言ったか?」
「ええ、3行ほど前にそんな台詞が……。」
「忘れたまえ。見なかったことにするんだ。」
「……いえ、いいんですけどね、別に。」
★★