Forbidden Palace Library #07 夜明けの前に


王都シルバニア
パン屋ソフトブレット

木彫りの看板の掲げられた小さなお店。
建物自体には相当の年期が入っていると思われるが、綺麗に掃除されているために古くささをあまり感じさせず、むしろどこか懐かしい雰囲気を醸し出している。

ショーウィンドウ越しに見える店の中では、茶色の髪を持った女性がパン生地をこねている。



すたすたすた。

くるっ。


「あたりの家はまだ明かりすらついていない時間なのに、
 こんな時間からパンを焼く準備をしているんですね。
 ……働きやさんなんですね、アリスさんって。」


すたすたすた。

くるっ。


レナード 「ああ。真面目でとてもいい子だ。」


すたすたすた。

くるっ。


「……それよりもレナード将軍。」


すたすたすた。

くるっ。


レナード 「なんだ?」


すたすたすた。

くるっ。


「何回パン屋さんの前を行ったり来たりすれば気が済むんですか?
 もしかして、アリスさんに見つけてもらって
 声を掛けてもらうのを待ってません?」

レナード 「いや、たまたま足がこのあたりを歩きたがっているだけだ。」

「……ちょっと無理ありません、その説明?」


からんからん


アリス 「あら、レナード将軍?」

レナード 「おはようございます、アリスさん。」

アリス 「お早うございます。」

レナード 「アリスさん、今朝、ポストは見ました?」

アリス 「ええ……?」

レナード 「ポストの中に白い封筒はありませんでしたか?」

アリス 「白い……いえ、見ていませんけど?」

レナード 「ふむ。ということはまだ誰かが持っていると言うことか……。」

「はい?」

レナード 「ああ、いや、なんでもない。こっちの話だ。」

「なんで封筒とアリスさんが関係あるんです?」

レナード 「余計なことは聞くな。
 さ、行くぞ秘書。
 アリスさん、ではまた後ほど。」

(……レナード将軍の探している封筒って……もしかすると?)



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