「あたりの家はまだ明かりすらついていない時間なのに、
こんな時間からパンを焼く準備をしているんですね。
……働きやさんなんですね、アリスさんって。」
「ああ。真面目でとてもいい子だ。」
「……それよりもレナード将軍。」
「なんだ?」
「何回パン屋さんの前を行ったり来たりすれば気が済むんですか?
もしかして、アリスさんに見つけてもらって
声を掛けてもらうのを待ってません?」
「いや、たまたま足がこのあたりを歩きたがっているだけだ。」
「……ちょっと無理ありません、その説明?」
「あら、レナード将軍?」
「おはようございます、アリスさん。」
「お早うございます。」
「アリスさん、今朝、ポストは見ました?」
「ええ……?」
「ポストの中に白い封筒はありませんでしたか?」
「白い……いえ、見ていませんけど?」
「ふむ。ということはまだ誰かが持っていると言うことか……。」
「はい?」
「ああ、いや、なんでもない。こっちの話だ。」
「なんで封筒とアリスさんが関係あるんです?」
「余計なことは聞くな。
さ、行くぞ秘書。
アリスさん、ではまた後ほど。」
(……レナード将軍の探している封筒って……もしかすると?)
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