「そういえばアシスト師団長ってよく空を飛んで逃げますよね。」

「ああ。
　エアーフライトの魔導だな？
　逃げるにはレビテーションの魔導より便利だからな。」

「え？エアーフライトとレビテーションってどう違うんですか？」

「……飛翔魔導には２種類ある。両方とも基本的に門外不出だが、
　その中でも一般的に通常使われているレビテーションと、
　俺が好んで使うエアーフライト。」

「まず、原理が根本的に違う。
　レビテーションは自身の重力をコントロールすることにより
　大地から離れ浮遊・飛行させる。」

「それに対しエアーフライトは自身の体重を擬似的に軽減し、
　局地的な強風を起こすことにより空に自らの体を飛翔させる。
　つまりこの風を強めればいくらでも速度は出る。」

「あ、なるほど。そういった違いがあったんですか。」

「安定性の面では常に大地とのバランスをとってるレビテーションの方が上だが、
　速度の点では風の力を味方に付けるエアーフライトの方が勝っている。
　ま、両方とも一長一短だけどな。」

「それで、アシスト師団長はよくエアーフライトを使うんですか？」

「ああ。それに、開発した人間に対する贔屓があるからな。」

「ひいき？」

「レビテーションの魔導はエルメキアで開発された歴史がある。
　メルフィア＝リリエンタール。
　その女性名がレビテーションの開発者だ。」

「余談だが、レビテーションは自分のみならず物体も浮遊させる事ができる。
　一方、エアーフライトを開発したのはウォルター＝ライトという魔導師だ。
　実を言うと俺の遠い祖先にあたる。」

「……そういえばアシスト師団長の祖先は姓名が違ったっていう
　そんな話を、何作か前の隠しイベントで仄めかしていましたよね。
　でもそんな伏線、誰も覚えていないと思うんですが……」

「文句があるなら、ほのめかした木枯吹雪に言え。
　とにかく、そんな理由もあって俺はエアーフライトの方を
　贔屓にしているってわけだ。」

「でもいつもくだらないことにその魔導を行使してますよねぇ。」

「何か言ったか、秘書？
　今もしかすると実験台になりたいとか
　そんなことを言わなかったか？」

「気のせいですよ。ええ、もちろん。
　やだなぁそんなこと言うわけないじゃないですかぁ。
　あ、レナード将軍の仕事がまだ残っているのでこれでっ！」

「……ちっ、逃げたか。」

★★