Forbidden Palace Library #07 夜明けの前に


王都シルバニア
ラントシュタイナー邸

住宅街と繁華街のちょうど中間あたりに建てられたラントシュタイナー邸。

先の大戦後、都市の防御力を高める目的で町の一部が再開発されることになったが、その一環としてまず最初に区画再整理されたのが住宅街と繁華街という両者の中間に位置したこの地域であった。
そういった理由でシルバニアの中でも新しいこの地区に合わせたのか、あるいは持ち主の性格を表しているのかまではわからないが、家の回りはいつまでも新築同然に綺麗に手入れされている。



「アークライト師団長!」

アーク 「むにゃむにゃ……。」

「アークライト師団長っ!!!」

アーク 「……ん?
 あれ?
 ……えっと。」

「お目覚めですか、アークライト師団長?」

アーク 「レナードくんとその一緒さん。」

「秘書ですってば。」

アーク 「どうして君たちはこんなところにいるんだろう。
 そして僕も。
 ……うーん、それが僕にもさっぱり。」

「い、いえ、あの、一人で完結されても困るんですが……。」

アーク 「きっといつもの夢遊病だ。うん。たぶんそうだ。」

「……は?
 あ、あのー、アークライト師団長、
 ひょっとして方向音痴だけじゃなく夢遊病も……?」

アーク 「うん。そうみたいだね。」

「みたいだね、って他人事みたいに……。」

レナード 「目が覚めたところで質問だ、アーク。
 昨日の会議……。
 そういえば昨日の会議には出席していなかったな。」

アーク 「うん。道に迷っちゃって仕方ないから猫と遊んでた。」

「……道に迷うと猫と遊ぶんですか?」

アーク 「うん、だって可愛かったから。」

「…………。」

レナード 「では、昨日は一度も作戦会議室に立ち寄っていないということか?」

アーク 「あ、そういえば夕方立ち寄った気がする。」

「夕方?」

アーク 「でも陽は沈んでいたから夜になるのかなぁ。たぶん午後7時頃。」

「それで、レナード将軍の机の上に白い封筒はありませんでした?」

アーク 「白い封筒?……うーん。見覚えないなぁ。
 10分ほど、作戦会議室で遭難してたけど
 見た記憶はないなぁ。」

「……さ、作戦会議室で遭難って……。」

レナード 「午後7時頃、と言ったな?」

アーク 「うん。たぶん。」

レナード 「……作戦会議終了後にアシスト、ベル、エリーゼの順で入室している。
 そして私が作戦会議室に戻り、封筒の紛失に気づく直前に
 アークが入室したということか。」

「つまりアークライト師団長の証言を信じれば、
 エリーゼ師団長退室後、アークライト師団長が入室するまでの間、
 午後5時半から午後7時までの間に作戦会議室に立ち寄った人物が……。」

レナード 「封筒を持ち去った犯人の可能性が強い。」

「容疑者として残ったのは……。」

レナード 「コペルニクスとユリア、か……。」

アーク 「ところで僕はもういいのかな?」

レナード 「ああ。とりあえずはな。」

アーク 「うん。じゃあ僕はこれで。
 ……あ、そうそう。
 さっき住宅街のパン屋さんから明かりが漏れてたよ。」

「……アリスさんのところのパン屋さんですか?」

アーク 「うん。たぶん。何か準備してたのを寝ぼけながら見た記憶があるなぁ。ぐー。」

「ってそこでいきなり寝ないでくださいよ、アークライト師団長。」



▽アーク邸へ行く
▽アシスト邸へ行く
▽ハーシェル邸へ行く
▽パン屋ソフトブレッドへ行く



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