Forbidden Palace Library #08 認可なき侵入


王都シルバニア
城壁

日差しをうけて白く輝く城壁。
そしてその城壁の下、同じ白さで輝く高枝切りバサミ。
季節が移り変わってもこの二つだけは変わらないものなのだろうか。

ついこの間まで城壁の上に常備されていた雪かき用のスコップは、もう季節的に必要ないと判断されたのか、兵舎に戻されてしまったようだ。

先ほどまで馬車の上で交渉していた商人達の姿もまばらになってきた。
どうやら交渉がてら昼食でも取りに行ったのだろう。



「そういえばまだユリア師団長に聞いていませんでしたね。」

ユリア 「なになに?なに聞きたいのー?
 アークの事? そういえば昔こんなこともあったわねー。
 あのね、みんなでピクニックに行ったとき……」

「いえ、あの、確かにその話も面白そうなんですが……ってそうじゃなくて。」

ユリア 「アークの方向音痴が面白いからってお兄ちゃんと後つけてて、
 そのうちに知らない場所にたどり着いちゃって
 全員で迷子になったこともあったっけー☆」

「いえ、そうではなく、
 次期師団長候補のジュリアスさんという方について
 お伺いしたいんですが……」

ユリア 「あたしのお兄ちゃんがどうしたの?」

「いえ、ですから次期師団長有力候補のジュリアス……」

ユリア 「だからジュリアスお兄ちゃんの事でしょ?」

「……は?」

ユリア 「10年ほど前におじーちゃんと喧嘩して家出しちゃったけど。」

「……ってことは、ボイス元帥が侵入を阻止しようとしている人物って、
 ユリア師団長のお兄さま、
 つまりボイス宰相のもうひとりの孫ってことですか?」

ユリア 「ぴんぽーん。
 だからあたしは中立不干渉って言ってたのー。
 これ以上話ややこしくしてもなんだしー☆」

「その言い方からすると、
 かつて自分が少なからずややこしくしたという
 ニュアンスを含んでいる気が……。」

ユリア 「やーねー、だめよ秘書ちゃんそんな細かいことにこだわってちゃ☆」

(…………もしかして、ジュリアスさんって
 さっき住宅街で道を教えたあの人?
 そう言われれば髪の色もどことなくユリア師団長に似ているような……。)



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