Forbidden Palace Library #09 君だけの騎士


王都シルバニア
中央公園

地面には花が咲き、芝生には草が生い茂る。
落葉樹は再び枝を青く染め上げ、針葉樹も冬とは違う鮮やかな青さを引き出している。
中央公園は冬と同じ場所とは思えないほどの、色鮮やかな色彩で満ちている。

冬にくらべ太陽が高くなったこの季節、影がくっきりと地面に映え遊ぶに適しているのだろう。
噴水の側では、子供達が無邪気に影踏みで遊んでいる。



ジュリアス 「レナード!」

レナード 「ん?
 いい所にいた、ジュリアス。
 先ほどの話の続きを聞かせてもらおう。」

ジュリアス 「そう、さっき一つ言い忘れていたが、
 存在そのものを抹消された第十三次北方調査隊だが、
 そこに所属していた隊員のうち、一名だけは名前が判明している。」

レナード 「一人だけ? それで、その名前は?」

ジュリアス 「エリック。エリック=ハミルトン。
 スペルからはエーリッヒと読むこともできるが、
 土地柄を考慮すればおそらくエリックと発音するのだと思う。」

レナード 「……ハミルトン?
 待て、現在この国に駐在しているカイザリア大使の姓名も
 ハミルトンだ。」

ジュリアス 「なんだって?」

レナード 「……エリック=ハミルトンと、グラン=ハミルトン。
 姓名の一致はただの偶然か、それとも親類か。
 これは調べてみる必要がありそうだな……。」

ジュリアス 「……諜報部も、楽じゃないねぇ。」

レナード 「ああ。公には存在していないことになっているからな。
 だから予算とて限られている。
 無論、人員もだ。」

ジュリアス 「だから、俺達のように先代からこの国に仕えている者達ばかりが
 選ばれているってわけか。
 ……ま、俺は大陸中駆けめぐって色々とおいしい物食えたからいいけど。」

レナード 「食い意地が張っているところ、間違いなく祖父の遺伝だな。」

ジュリアス 「失敬な、ボイスのじじいと一緒にするなっ。」

レナード 「……あんなところにチョコチップクッキーが!」

ジュリアスなにっ!?
 どこだどこだっ!? チョコチップクッキー!?
 おい、レナード、どこにあるんだっ!?」

レナード 「……………やっぱり遺伝だな、これは。」



▽ 城壁へ行く
▽ 繁華街へ行く
▽ 住宅街へ行く
▽ パン屋ソフトブレッドへ行く

★★



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