(あ、画家の人が何か描いている。
何の絵だろう。
……聞いてみよう。)
「あのー、すいません。」
「ほいほい、なんじゃい?」
(ほ、ほいほい……?)
「さっきから何の絵を描いているんですか?」
「ここから見える王城じゃよ。
ちょうどこの石に腰掛けると、
いい具合に木々と白と空がバランス良く調和しての。」
「あ、本当だ。
お城を中心にして空と木々が
綺麗に分かれるんですね。」
「うむ。夜景を描くにしても、
彩色はともかくデッサンは昼間の方が
取りやすいからの。」
「そういうものなんですか。」
「そういうものなんじゃよ。
……ところで、前にどこかで会ったことはないかね?
何となく既視感を覚えるんじゃが。」
「?……いえ、ないと思いますが。」
「ふむ。そうじゃったか。
かなり昔にどこかで会っておる気がしたんじゃが……。
すまん。気にしないでおくれ。」
「はあ……?」
★★