Forbidden Palace Library #10 舞え軽やかに


王都シルバニア
中央公園

朝の公園は静かで、空気がとても澄んでいる。
青葉に満ちた樹木の下を歩けば、
その新鮮な自然の吐息が、そよ風という形で頬を撫でる。

いわゆる『夏』の季節。
だが、緯度の高いこの地方では、決して暑くなることはない。



「あ、アークライト師団長。」

アーク 「えーと、謹書さん。」

「秘書ですってば。」

アーク 「十話目ぐらいになると
 だんだん分かりやすいネタが
 なくなってくるんだよね。」

「何の話ですか?」

アーク 「さぁ、それが僕にもさっぱり。
 それでどしたの?
 誰か探しているみたいだけど?」

「あ、そうだ。
 アークライト師団長、散歩の途中にでも
 コペルニクス副師団長見かけませんでした?」

アーク 「……うーん。
 マルス君なら屋根の上で会ったよ。
 のんびりぽかぽか。」

「何故屋根の上で……。」

アーク 「うん、一緒にお茶飲んだけどおいしかったよ。」

「いえ、そういう問題ではなくて。」

アーク 「お茶よりお茶菓子の方が好きなの?」

「……ちょっと話の方向ズレてます。」

アーク 「南なら、たぶんあっち。」

「そっちは北です。
 南に太陽が昇るわけないじゃないですか。
 ここは南半球です。」

アーク 「うん、そうかも。」

「……ってその方向でもなくて。」

アーク 「ほーう。こう?」

「………………。」

アーク 「じゃ、僕はまた散歩に戻ることにするよ。」

「ところでその散歩、いつから始めたんです?」

アーク 「えーと、一昨日ぐらい?」


すたすたすた

「……え、ひょっとして一昨日からずっと迷いっぱなし!?」


・・・

(あ、アークライト師団長に国旗渡してもよかったのか。
 でもそれだと、もっと大変なことになりそうだしなぁ。
 ……やっぱりコペルニクス副師団長を捜すしかないのか。)



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