Forbidden Palace Library #10 舞え軽やかに


王都シルバニア
住宅街

本来なら閑静なこの住宅街も、いつもより通行人が多く、
賑やかな声があちこちから聞こえてくる。

特に今は朝の静かなひとときのはずなのだが、
お祭りの前は時間を問わず例外的にその静けさが失われるようだ。

今日も夜まで、この活気が衰えることはなさそうだ。



「あれ、ジュリアスさん。」

ジュリアス 「ユリウスだってば。」

「どうしたんです、そんな大荷物で。」

ジュリアス 「ああ、ちょっと別件で用事があってな。
 戻ってきたばかりなんだけど、
 またすぐに王都を離れにゃならんのよ。」

「なるほど、そうだったんですか。
 にしてもその背中の大剣、
 かなり目立ちますね……。」

ジュリアス 「ハーシェル家に伝わる宝剣さ。
 別に戦いに行くわけじゃないんだけどな、
 なんとなくこいつが背中にないと不安でな。」

「ハーシェル家ってことは、
 ボイス元帥もかつてその剣を
 使っていたんですか?」

ジュリアス 「ああ、あのジジイの話を
 真面目に聞いたことはないけど、
 昔はこの剣携えて外国に行ったこともあるとか言ってたな。」

「随分と昔から使われて居るんですね。」

ジュリアス 「武器ってのは身を守るための道具だ。
 道具はこまめに手入れしてやれば、
 末永く使うことが出来る。」

「……ところでジュリアスさん、
 コペルニクス副師団長をどこかで
 見かけませんでした?」

ジュリアス 「ん?いつもみたく城壁にいないのか?」

「ええ。先程行ったときは不在でした。」

ジュリアス 「じゃあ所用で出掛けてるんだろ。
 たぶんすぐ戻ってくると思うから、
 時間おいてまた城壁に行ってみたらどうだ?」

「それもそうですね。ありがとうございます。」

ジュリアス 「おう、じゃあまたな。」


すたすたすた



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