Forbidden Palace Library #10 舞え軽やかに


王都シルバニア
住宅街
パン屋ソフトブレッド

朝の焼きたての時間にいた人だかりはもういない。
焼き上がりの合間のひととき、
少しだけの休み時間といったところか。

閑静な住宅街は、いつもの静けさを取り戻している。




からんからん

アリス 「いらっしゃいませ。」

ジュリアス 「よ!」

「あれ、ジュリアスさん。」

アリス 「……?」

「珍しいですね。どうしたんですか?」

ジュリアス 「レナードの奴がいつもここにいるって聞いてきたんだが。」

アリス 「レナードさんのお友達ですか?」

ジュリアス 「ああ。実は恋人同士なんだ。」

アリス (ガーーーーンっ!!!)

「ち、ちょっとジュリアスさん!?」

ジュリアス 「ま、嘘に決まってるけどな。」

「あのー、そういう嘘が通じる人と通じない人がいるんですが……。」

アリス (だめよ、そんなの不健全よっ!
 男同士で恋人同士だなんて、不潔すぎるわっ!!
 種族維持に繋がらないからって法でも認められていないのに!)

ジュリアス 「……もしもし、お嬢さん?」

アリス (でも負けない、負けないわっ!
 アリス、こうなったらもう色仕掛けしかないわっ!
 うう、あんまり自信ないけど……だめ、負けちゃだめ。)

「あのー、アリスさん?」

アリス 「あ、は、はい?」

ジュリアス 「レナードの奴、今日はまだ来てないのか?」

アリス 「はい。」

ジュリアス 「そうか、レナードの奴はいないのか……。」

「そんなに周囲を見回してもいませんてば。」

ジュリアス 「いや、どこかに隠れて寝てないかなと。」

「なんで寝てるんです?」

ジュリアス 「いや、なんでも。こっちの話だ。」

アリス 「?」

ジュリアス 「まあ、じゃあ奴が来るまでここで待つかな。」

「……普通、そういう時は出直すとかしません?」



▽ 中央公園へ行く
▽ 城壁へ行く
▽ 繁華街へ行く
▽ 住宅街へ行く

★★



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