Forbidden Palace Library #11 本意なき発言


王都シルバニア
城壁

収穫の秋。街道が最も賑わい、馬車の往来が最も多い季節。
ここシルバニアも例外ではなく、国内外からの収穫物が次々と運ばれてくる。

ある荷馬車は北から南へ、またある荷馬車は南から北へ。
そしてまたある荷馬車は、この都市を終着駅として。



エリーゼ 「シルバニアの城壁には3つの門があって、
 それぞれフェルディナント門、ジェイド門、ネフライト門と
 名前が付けられているのよ。」

「なんだか人名っぽいですよね。」

エリーゼ 「ええ、その通りよ。
 このシルバニア市を建設するにあたって、
 偉大な功績を残した人達なの。」

「それぞれどんな人だったんです?」

エリーゼ 「フェルディナントさんは、
 この王都建設にあたって一番上で指揮した人よ。
 でも結局この都市に移住する事なく、自国へ戻ったみたい。」

「え、自国って……シルバニアの人じゃなかったんですか?」

エリーゼ 「もともとブランドブレイの騎士団長だったの。
 分国するにあたり派遣されてきた総督のような立場だったから、
 任務が終わったら律儀に帰ったみたい。」

「自分で指揮した都市に住みたいとは思わなかったんですかね?」

エリーゼ 「やっぱり愛着はあったでしょうね。
 実際、シルバニアへの移住を望む声もあったみたいよ。
 でも、不公平になるからって断ったんですって。」

「不公平って?」

エリーゼ 「ただ指揮したというだけで、一族が名士になるのを嫌ったみたい。
 それに建設指揮者の末裔がその都市に住んでいたのでは、
 何かと不都合もあるだろう、って。」

「……なるほど。」

エリーゼ 「だから、仮に移住するとしても、
 この街の市民がフェルディナントさんの姓名を
 すっかり忘れた頃になるだろう、って。」

「それで、その人の姓名は?」

エリーゼ 「幸か不幸か、彼の望み通り、今となっては忘れられてしまったわ。
 もちろん公文書資料室に行けばきちんと記録に残っているわ。
 けれど、街の人達はもう誰も覚えていない。」

「……なんだか、寂しい話ですね。」

エリーゼ 「どうかしら?
 私達が知らないだけで、意外と身近に
 舞い戻ってきているかもしれないわよ。」



▽ 中央公園へ行く
▽ 繁華街へ行く
▽ 住宅街へ行く

★★



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