「こんな感じ、かな。」
「ほぅ、意外と上手いではないか。
みたところ肖像画のようじゃが、
その娘は一体誰じゃね?」
「昔の、旅の仲間さ。」
「ほぅ……。
それは、お前さんにとって、
大事な人かね?」
「……ああ。もう、どこにもいないけどな。」
「そうか……。」
「…………。」
「……若いの、一つ教えてやろう。」
「ん?なんだ?」
「『魔導原本』というのを知っておるか。」
「なんだ、そりゃ?」
「今の魔導ができるよりも昔、
書かれた一冊の本があったそうな。
その本から、破れ落ちた数ページの紙切れ。」
「その中の一枚に、
生命の根幹について記載された
箇所があるそうな。」
「!」
「じゃが、その話が本当かどうかは知らぬ。
ただ、それを集めていた男を儂は知っておる。
いや、知っておったというべきかも知れぬな。」
「過去形なのか?」
「昔、一度だけ顔を合わせたことがある。
儂はその時以降、本来の命題と暗殺術を捨てた。
……それだけの話じゃ。」
「……確かに、もしあいつが生きていたらって思うことはある。
だけど、別にいいんだ。
目を瞑れば、あいつの顔はいつでも脳裏に浮かぶから。」
「そうか……強いんじゃな。」
「よせよ、照れるぜ。そんなんじゃない。
戦功を讃えられて師団長なんかやってるけど、
俺は所詮風来坊だしな。」
「そうか……。」
「ところでじいさん、さっきなんか物騒な言葉口にしなかったか?」
「気のせいじゃて。」
「そうか、気のせいか。
……ん?
なあ、やっぱりなんか騙されている気がするんだが……。」
★★★