Forbidden Palace Library #10 舞え軽やかに


王都シルバニア
繁華街

お祭りが近いとあって、街は普段よりも多くの人で溢れている。
本来なら街路樹の前後2メートル以内に出店が規制されているはずの露店も、
この時期ばかりは多少越えていてもお咎めはないようだ。

それもそのはず。
本来なら監視する側の王立軍の兵士達も、お祭りに浮かれているのだから。

昼を過ぎても、混雑が止みそうな気配はない。



グラン 「これはこれは。
 丁度よいところでお会いできた。
 秘書殿、カイザリア大使としての連絡事項があるでござる。」

「あ、はい。なんでしょう?」

グラン 「レミィティアーナ陛下の戴冠五周年式典でござるが、
 我がカイザリア帝国からは拙者の他に、
 パスカル幕僚長の出席が正式に決定したでござる。」

ベル 「パスカル幕僚長?」

「あ、ベル師団長。」

ベル 「よお。」

グラン 「歴史に名高い稀代の帝国軍参謀ユージン=パスカルを祖とし、
 カイザリアの名門中の名門に連なる軍閥の一族でござる。
 建国以来、国家の中枢を担っているでござるよ。」

ベル 「……へぇ、そんな奴いたんだ。
 で。
 誰なんだ、そいつ?」

グラン 「……グリフィス殿。
 同じカイザリア出身として、いや、我が従兄弟とはいえ、
 あまりの無知に拙者は悲しいでござる。」

ベル 「なんか名家って俺好きじゃないんだ。
 名前が知られてるってだけで、
 なんとなく威張ってる感じがしてさ。」

グラン 「否、否。グリフィス殿。それは違うでござるよ。」

ベル 「え?」

グラン 「名家とて、始めから名家だったわけではござらん。
 幾代にも渡り、己が力で道を切り開き、
 人々に認められたからこそ名家となり得たのでござる。」

ベル 「……あ、そっか。」

グラン 「なればこそ、その誇りを傷つけぬ為にも
 人一倍以上の努力を必要とする。
 その名声を維持するのも決して容易ではないのでござるよ。」

(なるほど……。)

グラン 「もっとも、己が始祖の成果を越えようとの努力もせず、
 いつまでも七光りに甘んじる輩もいるのは確かでござるが……。
 こほん。関係のない話でござったな。」

グラン 「それはそうと秘書殿。
 カイザリア大使としての連絡事項、
 拙者は確かに伝えたでござる。よろしいか?」

「かしこまりました。将軍に言付けておきます。」

ベル 「おー。まるでどこかの秘書って感じだな。」

「いえ、秘書なんですが、一応……。」



▽ 中央公園へ行く
▽ 城壁へ行く
▽ 住宅街へ行く
▽ パン屋ソフトブレッドへ行く

★★



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