Forbidden Palace Library #10 舞え軽やかに


王都シルバニア
住宅街

本来なら閑静なこの住宅街も、いつもより通行人が多く、
賑やかな声があちこちから聞こえてくる。

昼食の時間を過ぎて、賑わいはより一層大きさを増してきた様だ。
その喧噪は、日が沈むまで止みそうにもない。

年に一度のイベント、戴冠記念式典は一週間後に開催される。



「あ、ユリア師団長。
 そういえばさっきの旧アルゲンタイン……、
 カイザリアの話なんですが。」

ユリア 「ん?なぁに、秘書ちゃん?」

「カイザリアって、他の国と比べて
 ちょっと独特の言い回しというか、
 独自の言葉表現みたいなのがありますよね。」

ユリア 「そうねー。
 アルゲンタインの頃はそうでもなかったみたいなんだけど、
 カイザリアになってからその傾向が顕著になってきたみたい。」

「カイザリアになってから?」

ユリア 「二代目皇帝のジークフリートっていうおっちゃんが、
 なんか銀狼帝を凄く尊敬していたみたいなの。
 だから彼以降の皇帝は『準位銀狼』っていう称号があるのよ。」

「準位銀狼?」

ユリア 「意味的には、銀狼に次ぐ地位ってことなんじゃない?
 逆に言えば、誰も初代銀狼帝には届かないっていうことを
 暗に示しているんじゃないー?」

「へぇ……そんなに凄い人だったんですか?その銀狼帝って?」

ユリア 「うーん、あたしもよく知らないのよねぇ。
 歴史の時間、よくサボって窓の外見てたから。
 あとアークが前の席にいたときは絶対後ろ向いてたし。」

「……なんですか、それ?」

ユリア 「あはは、昔の話よー☆ 気にしない気にしないー☆」

「はぁ……。
 確かにその名前は歴史に登場する人物の中でも有名ですけど、
 銀狼帝って本当は一体どんな人だったんですかね?」

ユリア 「さぁ、あたしも会ったことないしー。」

「いや……とっくの昔に死んでるんだから、それはそうなんですが。」

ユリア 「え、何?
 秘書ちゃんお墓でも掘り起こして顔見たいの?
 そんなことしたら末代まで祟られるわよー。」

「そ、そんな怖いことできませんってば……。」



▽ 中央公園へ行く
▽ 城壁へ行く
▽ 繁華街へ行く
▽ パン屋ソフトブレッドへ行く

★★



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